根ワークショップ(金谷) 発表要旨 1999.11.19
この要旨の出典:
大山直美・本間知夫・仁木智哉・阿南豊正・腰岡政二 1999. チャにおけるジベレリンの解析. 根の研究 8(4):*.
チャは分枝力の旺盛な常緑の木本植物であり、その新芽を摘み取ることによって、芽は年に数回萌芽・伸長する。このようなチャの盛んな成長は、茎葉部で生合成されるジベレリン(GA)によるものだけでなく、地下部からの転流によるジベレリンも関係していると考えられる。
本研究では、地上部の成長に及ぼす根由来のジベレリンの影響を調べるために、根、道管液、茎葉部のジベレリンとその配糖体の検索を行った。また、萌芽と道管液中のジベレリンとの関係を質的・量的に検討するために、萌芽開始から一番茶収穫後までの、道管液中のジベレリンの定量を行った。
その結果、遊離型ジベレリンについては、道管液よりGA9, GA12, GA15, GA20, GA44, GA51, GA53、茎葉部よりGA1, GA4, GA9, GA15, GA17, GA19, GA20, GA24, GA25, GA44, GA51, GA54, 1-epi-GA61を同定した。ジベレリン配糖体については、その酵素処理区において、茎葉部よりGA1, GA19、根よりGA12, GA19, GA20, GA53, GA112, 16a-17-H2(OH)2-GA12, 16b-17-H2(OH)2-GA12, 16,17-OH-GA53 を同定した。時期別の道管液におけるジベレリンの定量については、全体的にGA44, GA20, GA15, GA9 のレベルが高く、萌芽・成長・収穫につれて含量・組成ともに変動することが分かった。
以上の結果より、茶葉の生育期間中の道管液中に存在するジベレリンは、早期13水酸化経路または非水酸化経路の活性型ジベレリンの前駆体もしくは不活性型のジベレリン(GA51)であること、茎葉部に存在するジベレリンは活性型(GA1, GA4)及びその前駆体、不活性型のジベレリンであることが明らかとなった。また、根については、遊離型は検出されなかったが8種のジベレリン配糖体が存在していた。根の伸長に必要とされるジベレリンは、茎葉部に比べて低いレベルで働くと考えられていることから、根においては活性型にいたる3b位水酸化能が茎葉部に比べて低いか、もしくは活性型前駆体を配糖体化することによって不活性型、あるいは貯蔵型にし、ジベレリン生合成を調節している可能性が考えられた。また、道管液中に検出されたGA53, GA12は、根のジベレリン配糖体が分解したものである可能性が考えられた。