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この要旨の出典:
中野明正 1999. 施設生産土壌におけるストレス緩和技術と根系の反応. 根の研究 8(4):*.


施設生産土壌におけるストレス緩和技術と根系の反応

中野明正

農林水産省 野菜・茶業試験場 施設生産部 環境制御研究室

<施設土壌の現状>

 日本における施設土壌の塩類集積の現状はどうだろうか?.全国7県から採取した施設土壌139点を分析し,露地土壌38点と比較したところ,施設では露地に比べ約7倍の塩類が集積しており,集積塩類も硫酸イオンや塩素イオンの割合が増加していた.
これらの現状を踏まえて,根系ストレスを緩和するための施肥および栽培法を検討した.

<質的な改良〜ノンストレス肥料〜>

 塩類ストレスを回避する目的で,過剰の硫酸根を含まず,ECの上昇が低く抑えられる緩効性肥料(無硫酸根緩効性肥料Non-sulfate slow releasing fertilizer :NSR)の効果を詳細に検討した.その結果,NSRは,従来の緩効性肥料に比べ高濃度で施肥した場合でも根系の発達が維持され,施肥層での根の褐変が抑制されることが明らかとなった.また,出液量も対照肥料に比べ高く,出液中の肥料成分も栽培後期まで高く維持されていた.
これらの肥料の性質の違いはトマトの果実品質にも影響を与えており,トマトの尻腐果の発生率は,NSR施肥で低く抑えられる傾向にあった.残留肥料成分の分析からも,NSRは土壌環境をより良好に保ち,持続的な生産を可能とする肥料であることが示唆された.

<施肥法の改良〜養液土耕〜>

施設生産のストレス因子である過剰塩類ストレスを回避する技術として,養液土耕法の適用を検討した.
養液土耕法(潅水同時施肥法)は,液肥を植物の必要量にあわせて,頻繁に施用する方法であり,根系へのストレスを回避するほか,施肥効率を上昇させることによる施肥量の削減などが期待されている.本研究では,もう「ひと捻り」として,潅水同時施肥のシステムにおいて,製糖工場で生じる廃棄物:コーンスティープリカー(Corn Steep Liquor : CSL)を液肥として利用すること検討した.その結果,収量は従来の栽培法と同等であり,未熟な食品系廃棄物を用いて野菜栽培が可能であることが明らかとなった.
根系形態の反応としては,有機養液土耕区で根が太くなることが明らかとなった.


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