Plant Root運営委員会から、根研究会会員の皆様へ
"Plant Root"にぜひご投稿を!」

 「根の研究」誌や研究集会においてアナウンスして参りました、根研究会が発信する国際的なオンラインジャーナル"Plant Root"が走り出しました。
 編集方針・体制につきましては、主に運営委員会で議論しながら固めていっている所です。特に、テクニカルな事柄など雑誌の基礎工事にあたる部分を、編集部の心臓部ともいえるManaging editorの皆さんが、本来の業務に加えてものすごい勢いで頑張って下さっています。その中で、まだ目新しい電子ジャーナルということもあり、「号の区切りはどうなっているの?」「1年に1回しか発行されないの?」などの、質問が会員の皆様から寄せられています。「雑誌の目的は?根研究会との関係は?」などの疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。そこで、これらの疑問にお答えしたいと思います。もちろん、雑誌は進化しますから、これから変わっていくことも予想されますが、ここまでのところで運営委員会で固まってきた雑誌の方針をお知らせし、またここまででこの雑誌立ち上げに関わる皆さんとのやりとりの中で感じてきた、共有していると思う部分を代弁して、投稿を呼びかけたいと思います。
 まず、雑誌と研究会との関係ですが、雑誌は何かが母体となってイニシアチブをとってエネルギーを注いで立ち上げ運営しなければなりません。その役割を根研究会が担ったということで、著作権も会に帰属しますし、会がコントロールしています。しかし、研究会の会員の利益だけを考える単なる「英文広報誌」ではありません。あくまでも世界の根の研究の発展を目指す国際誌で、皆さんを含め世界の根の研究者でこれから作り上げていく雑誌です。その中で、私たち日本の研究者の立場としては、海外から学びまた教える中で、日本から発信できることはどんどんしましょう。雑誌としては、気づいたら格式のある雑誌になっていた、というのはこの上ない本望ですが、それには時間もかかるでしょう。ひとまずは根の研究のデータベース、何時でも何処からでも誰でも瞬時にアクセスでき、未来永劫の根の研究者に開かれたオンラインジャーナルというメリットを生かし、小さなレビューでも構いませんから、とにかく根に関する研究成果を蓄積していくことではないでしょうか。根のことはここにくればOK、というポータルサイトのようなものになれば素晴らしいです。これはバーチャル根研究所への構想に少しつながる考え方かもしれません(バーチャル国際根研究所?)。通常の論文をはじめ、特集企画などもとにかくどしどしお寄せ下さい。これまでに「根の研究の最前線」に執筆された方は、それを英語にして世界に発信するという企画も大歓迎です。
 Editorの皆さんは、根の分野で世界的に著名な大先生と呼べる方を始めとして、世界に知られた中堅どころの先生方、また若手であっても世界に視野を持った専門家が「根の研究を志す若手を教育する」ために集まってくれました。そして世界の一流の査読者に依頼を始めて下さっています。またこのような新米の雑誌に賛同してくださるreviewerの方々は、基本的に暖かい教育的視点をもって下さっています。つまり、若手にとっては、一流誌に投稿するのと同程度の査読者に、「暖かい教育」を受けられるわけです。厳しい結果が返ってきたとしても、それはあくまでも愛の鞭と言えるでしょう。
 新米雑誌ですから、正直言って、何年越しの大仕事や、修士・博士課程にとって大事な最初の1、2本を投稿するのは抵抗があるかもしれません。電子ジャーナルは今のところどこもうまくいっているように見えますが、そのうち競争も始まるでしょう。しかし数ある雑誌の中で、Plant Rootほどメッセージのはっきりした雑誌もそう多くないでしょう。また世界初の根の雑誌ですから、分野を越えた誘引力も期待できます。しかも、根研究会というコミュニティーの要望に動かされ、有志の若手のエネルギーで実現した、由緒正しい雑誌です。将来の安定成長を見込んで、お買い得な時に投資をしておくのも損はないと思います。"Plant Root"(http://www.plantroot.org/)にぜひご投稿をお願いします。(唐原一郎)

----
Plant Root方針

・J-STAGEを利用します。
 専用のウェブサイトに加え、J-STAGEを利用し、doi(およびjoi)も取得します。これによりcrossrefなど外部のデータベースとつながります。まず公開から始め、投稿・査読システムの電子化も準備します。なぜJ-STAGEなのかについては、国のサポートにより無料であることと、学会が著作権を保持できるというメリットのためです。組版の経費は、安い業者だと8ページの論文1本で15,000円程度です。J-STAGEでは日本の色が出ますが、専用ウェブサイトのドメインは.jpがつかない.orgを取得しました。(著作権については、海外出版社でも様々な形態をとれるようになってきているとの情報もあり、冊子体を出すことや海外著名出版社への移行は、将来の検討事項です。)

・通しのページ数を付けます。
 オンラインジャーナルの場合、通しのページをふる方法(たとえば、Plant Root 1:5-10)だけでなく、論文番号をふる方法(たとえば、volume 1のarticle 2ならPlant Root 1:2)もあるので、どちらがいいか意見が出されました。従来の形とcompatibleで抵抗が少なく、また将来、出版社を通じて冊子体を出すことになった場合にも通用する、通しのページをふる方法でいきます。

・1年1巻とし、号に区切りません。
 冊子体を出す場合は、どれだけの号に区切るかは重要で、多いほど速報性があるわけで、例えば1年に1号では話になりません。しかしPlant Rootは電子ジャーナルのため、受理し組版が終わりdoiがつき次第即時公開されますから、冊子体を出さない限り号に区切る必然性はありません。しかし、本当に号に区切らなくていいのか否かについて検討しました。テクニカルな違いは、号に区切らなければdoiによる即時公開と同時に最終ページが付き、号に区切れば最終ページは号の発刊のときに付くということだけです。
 号に区切らない場合J-Stageやトムソン・サイエンティフィック(インパクトファクター取得のため)の収録基準に触れないか、については特に触れないことがわかりました。号に区切ると、reviewをregular articleの前に持ってくるなど、号ごとの色を出せるメリットがあるという意見や、例えば農研機構による業績評価の際の雑誌のランク付けには年4号発行という基準があるなどの情報も出されました(ただこの場合、既に和文誌が年4号発行しているのでPlantRootがどのような形でも基準をクリアすることがわかりました)。一方、号で区切るデメリットは、原稿数が集まらないうちは何とも貧弱に見えることがあります。
 情報が一通り出て、議論も落ち着き、会長・副会長の提案もありましたので、ここは純粋な電子ジャーナルなので、号に切らなくてもいいことをメリットと考え、号の区切りは設けないことに決めたいと思います。トムソン・サイエンティフィックの収録のためには「四半期に最低5論文、または9ヶ月中に15論文以上」という基準があるため、当面気にするのはこれだけにしましょう。とはいえ、これはまともに考えると重いプレッシャーで、これに振り回されてしんどい思いをしてもしょうがありません。短距離走ではありませんので、最初からスパートせず、本来の目的を達する過程で結果としてついてくればいいくらいに思い、無理せずいきましょう。

・ISSNを取得します。
 ISSNがついていることで,オーソライズされているように見えるという利点があります。海外の図書館では、ISSNがついていることを基準に収集されるということもあるようで、取得しておくべきと思われます。電子ジャーナルの場合、号の区切りは特に問題なく取得できるようなので、取得します。